ヴァル研究所(以下、ヴァル研)さんに遊びに行ってきました。
サービスとしては、「駅すぱあと」などで有名ですが、ある一方では会社全体で、アジャイルおよびアジャイルのプラクティスを導入され、業務改善にすごく良い感じで取り組んでおられることで有名な会社さんです。
遊びに行ってきた聞いたきたこと、感想などをメモ的に残しておこうと思います。
何をしに行ったのか
有名なスライドで、↓のようなものがあるのですが 、
www.slideshare.net
この発表者のぷぽさん id:pupupopo88 と面識があり、
- アジャイルの組織への導入
- 実際の運用方法
について事例を見たり、それについて議論したりするという目的で見学に行ってきました。
公開できない情報が記載されていたので、KPTボード、リリーストレイン、カレンダーボード、スプリントボードなどは写真に収めてこれなかったのが残念です。
中の人のブログがあって、物理ボードの雰囲気などは伝わるかなと思っています。
hiiiiiiihikaru.hatenadiary.com
KPTについて
KPTは振り返りツールで、
- Keep=よかったこと
- Problem=悪かったこと
- Try=次に試すこと
の頭文字を取っています。
僕が所属する開発チームでも導入していましたが、「T」が消化されず、意味を見出せなくて立ち消えてしまったという経緯がありました。
話しているうちに、継続させていくにはいくつかポイントがありそうだなと思いました。
物理でやったほうが良い
ヴァル研さんは本当に物理ボードが多く、いろいろなことを物理的に可視化されています。 その中でもKPTは物理でみんなで囲みながらやった方が良いとのことでした。
ワイワイやるのが大事
「KPTで振り返りを始めます」といっても、業務が忙しかったり、やり方に馴染みがなかったりすると辛いというメンバーがいたりします。
そういったことを解消するには、楽しく続けて、習熟させていくということが重要ということでした。
KPTでよく言われるのは「ちょっとくだらないことをあげて発言のハードルを下げる」、というテクニックですが、同じ感じで始めはKを多めにして、より楽しくするということが重要なようです。
PをPのままで放置しない
「やるやら」をまず決める、対応するものをTに落としてマトリクス化(重要度と難しさを軸にする)することが重要とのことでした。 やらないものについては2種類あって、
- 大した問題ではない
- 大きな問題すぎる
後者は、別で深掘りするための会議などを設けるといったTにすることが重要とのことでした。
大きすぎる問題について、Tを無理やり作ってしまうと、結局重い問題だけが溜まってしまうというのは僕のチームに起こった問題に近いかもしれないと感じました。
また、「やるやら」や、やらないことの大きさの判断については、本当の課題を見出す技術などが重要というのがありました。
そういったことに長けた外の人を呼んだりしつつ、併せて技術力を磨いていくしかない、ということでした。
リリーストレイン + カレンダーボード + スプリントボード
この3つのボードが、ヴァル研の多くのチーム(特に開発関係)で導入されていたように感じました。
規模の順に リリーストレイン => カレンダーボード => スプリントボード という関係性です。
基本的には
- リリーストレイン
- 半年間の大まかなスケジュール(半月単位で見直しあり)
- カレンダーボード
- 月1のものリリーストレインからブレイクダウンしたやること、イベント
- スプリントボード(カンバン)
- 1週間(1スプリント)単位でのタスクとそのポイント
という風に分類をされているようでした。
すべて物理でやられているところも多かったのですが、開発チームについては、PRとタスクを紐付けたり、リモートワークに対応するためにスプリントボードのみデジタルにされているチームが多いということでした。
また、スプリントボードのタスクはそれぞれに、
- やる理由
- ゴール
- 大まかな方法
を書くことをルール付けされていました。 粒度や書き方などは修正すれば良くて(例えば小さすぎるタスクには何も書かれていなかったりしていました)、徹底することよりも、始めること、それを続けることが大事なのだな、という印象を受けました。
その他
開発以外のチームで導入する良さ
純粋に、そのチームの業務が改善するということ以外にもメリットがあるようでした。
開発以外とも含めたチーム間でアジャイル用語や、アジャイルのプラクティスの言葉が伝わるという状況はかなり嬉しいということでした。
確かに、開発には「それは優先順位低いから次のスプリントでやりますね。」というので伝わることも、営業さんやその他のビジネスサイドの方には、違う言い方をしないと行けないのは積もるとコストなのかなとも思いました。
共通言語の本として、SCRUM BOOT CAMP THE BOOKを導入されていて、一時期購買の書籍購入履歴がそればかりになったという話もされていました。
VSM(Value Stream Mapping)*1
僕も初めて知ったのですが、VSMというものが、開発島の至る所に貼ってありました。
僕のかんたんな理解では、開発にかかった時間を可視化することで、どこのプロセスにどれだけの時間がかかっているかを可視化し、効果が高いタスクや改善ポイントを見極めることができる、といったものです。
いろいろな壁に貼ってあるのをざっくりと眺めて、サービスの流れが見えるような気がしたので、本来の目的だけではなくサービス全体を見渡す意味でも良さそうだなと感じました。
また、ヴァル研では、そのプロセスを誰が担当していたかということも書かれており、その部分に詳しい人もわかりやすくなっているのも良さそうでした。
物理ホワイトボード、壁が豊富
自社ビルということもあり、広く、(開発以外も)1チーム5~10人に2枚ずつくらいのホワイトボード があり、さらに壁際に基本的に机がなく、壁がフリーでした。
壁一面をホワイトボードして活用されているところも多かったので、僕の会社にはない感じだなと思いました。*2
物理での可視化は、
- 一覧性
- 絶対にみんなが見る
- ゲーミフィケーション
的な意味で良いなと思いました。
自社ではどのように実現するのか、物質的な問題は個人では解決が難しいなと悩ましいところだと思いました。
週の真ん中に振り返りをやる
スプリントレビューについてもKPTも週の真ん中にやるのが良いということでした。
理由としては、金曜日になると疲れも溜まって生産性が下がったり、ネガティブな意見が多くなったりするとのことです。
水曜午後1が一番のおすすめポイントらしく、なんとなくキリがいいというだけで週の最後にしていましたが、それだけで雰囲気が良くなるなら即採用なんじゃないかなと思いました。
まとめ
とりとめのないものになってしまいましたが、今回の見学では、「圧倒的な物理の可視化とその維持のノウハウがすごかった」、という印象でした。
組織にアジャイルの概念、プラクティス、そしてカイゼンの文化を導入しようとしたのは、上からのお達しだったらしいですが、それを受けて社員のみなさんがしっかり続けられていたのがすごいなと思いました。
真面目な人間性がそれを実現している、という話をされていまたが、それ以上に本当にカイゼンが必要だと思って、ちょっとつらくても明るく楽しそうにカイゼンしていく人がいたからこそなんだろうな、と思いました。
今回僕は非公式に個人としてでお邪魔させていただきましたが、ヴァル研では会社単位などでも公式に職場見学を受け入れておられるそうです。
お招きいただいたぷぽさんも、 DMにて、
何かを変えたいと思ったとき、特に組織的な事の場合はひとりでやるのはやっぱり厳しくって、仲間を見つけた方がいいです。今はいなくても、仲間にしたい人、なってくれそうな人。 そういう人と会社見学に来ると、また違ったものが得られると思います。(ということもあり、昼間に会社単位で見学、現場の生の声を聞いてもらってます) (原文ママ)
というふうにおっしゃっていたので、検討してみてはいかがでしょうか? 実物見るとすごいと思います。
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ぷぽさんは僕がパーソナリティを務めているPodcastでもアジャイル関連の話をしていただいているので、よかったらそちらも聞いてみてください。
- sp.13a【ゲスト: pupupopo88】楽しいエンジニアが職種を超えて業務が効率化された話
- sp.13b【ゲスト: pupupopo88】楽しいよちよちRubyistがコミュニティに貢献する理由
*1:cf. https://qiita.com/i35_267/items/1c2d75861b55c537f1e0
*2:バーンダウンチャートが物理になっているのはすごいなと思いました。